『月人壮子(つきひとをとこ)』

第2歌集。この歌集から旧かな遣いにする。

「かりん」入会後の30代後半~40代初めの歌を収める。

日常詠のほか、特徴的なものとしては故郷の水俣を歌った長歌、

チベットで鳥葬を見たときの連作、フェルメールの絵をオランダや

ベルギーに追いかけて旅した作品、父の死を歌った長歌と連作がある。

・わだつみのトヨタマヒメの持つ瓶の水とことはにゆめな犯しそ

・死のひとつくまなく食みし禿鷲は頭蓋骨ひとつわれに残せり

・水俣病患者の写真なく■■■■■■■■■■■■無言に抗議す

・沈黙のすずしさに見るフェルメール十七世紀のミルク零るる

・ずつとずつとひとりでゐるのはどうですか樹に問へば樹はおほらかに立つ