『六月の扉』

初めての歌集。新かな遣い。

20代の終わりから30代前半の時の歌を収める。日常を歌ったものが多い。

中国の大学での夏の生活、ウィーン、ザルツブルクの旅行詠を入れる。

・舌の上に言葉をのせてつぶやけば梅園の鳥は近づいてくる

・頼りない湯豆腐のような君なれば生姜のように座ってあげる

・冬の朝ハレルヤを口ずさみゆく生徒がありて教師がありぬ

・乱舞とは呼べぬ螢は夏の夜を草に醗酵なすごとく光る

・一片の白き貝殻のごとくわが片耳をおく夏の日の海

桜川冴子 短歌ホームページ