『ハートの図像』

第3歌集。40代前半の歌を収める。

かつて受洗を授けてくれた牧師が宮崎におられ、隠れ切支丹の

墓地を研究をなさっており、東九州に多く残っていることを知った。

歌いはじめは宮崎の墓地に連れていってもらったことにはじまる。

その後、大分、天草、五島列島、馬渡島、生月などの墓地を訪ね、話を聞く。

舟や車を出して下さった方、図像について教えてくださった方、オラショを

聞かせてくださった方など、実に多くの方の信仰と思いと協力があって成った本。

歌集の特徴はこうした歌と旭川のアイヌ墓地の歌にある。

・蓮の花刻まれてゐる墓石に隠れ切支丹の裸身(はだかみ)を撫づ

・春雨にシューズを濡らし立つてゐる少年のごとき墓に近づく

・ひかり風くぐりて走る一年生たんぽぽ星人たちの春です

・水色のブラウスのなか吹きわたる青葉の風の駅なりわれは

・虫すだくさやかな空の群青に螺鈿細工の月鳴りいづる