『キットカットの声援』

第4歌集。40代後半から50代の初めの頃の歌を収める。

Ⅰ章、Ⅱ章は教師生活30年を迎えようとする日々を題材にしたものが多い。

Ⅲ章は東日本大震災の後、被災地を訪ねたときの歌を収めている。

・知恵の実の林檎を取りし罪の手は人の弁当を間違えて食ぶ

・あたらしい教科書の匂ひを嗅いでゐる中一の子らよ「はる」を開かう

・ゆで卵かちんと割つてしづかなり誰のものでもない私の朝は

・「先生が頼りです」なんて言はれをりどうかなあ吾は吾さへ裏切る

・今日の授業恥づかしいほどダメだつた火照つた頬を両手でつつむ